2006/02/06

第46号

個人と会社のトラブル解決のシステム
は4月1日から一変する。詳細な制度の解説は後として、全体の概要は次の通り。

あっせん・・・・・・
白黒の判定は別にして、円満な解決を図りたい場合。
労使のいずれからでも、あっせん申請をすることができる。有能な者・仕事をする者とのトラブルで、解雇とか制裁処分も出来ないとのジレンマに陥るトラブルがある。こういったときに事態を打開することができる。トラブルが、会社組織の「示し」をつけざるを得ないとき、感情的になってしまったりしたとき、これらの段階に来たときは、うってつけの制度である。決して、トラブル金額の少ない事件に限られるものではない。ただし、労働基準法などを下回る和解は無効にされるので注意が必要だ。

労働審判・・・・・・
白黒の判定を3?4カ月以内に求めたい場合。
イメージは「訴訟上和解付き労働裁判時間短縮版」である。労働者にとっては、結構単純なトラブル内容に決着をつけたいときの非常に有利な制度である。解雇事件で、必ずしも職場復帰したくない場合には、通常訴訟の四分の一程度の期間で判断が示されるから、労働者にとってはとても便利だ。片や、個別企業にとっては、少々大変なこととなる。いわゆる短期決戦。一挙に証拠提出をしなければならず、証拠調べに職権事実調査が導入されることから、今までの裁判と比べ緊張の連続となる。加えて、労働審判から通常訴訟への移行のことを考えると、アメリカのように弁護士の人海戦術で対応しなければならないから、弁護士費用は増加する。(現行でも、着手金70万円以上は用意しないと、経営側一流弁護士は確保できない。50万円の弁護士では負ける)。ところで労働審判がらみ事件で、中にはマーケティングを行っており、雇用保険失業手当の給付期間中であれば、訴訟を起こす労働者も増えるのではないかとの目論見を立てている弁護士もいる。しかしながら、この目論見は紛争現場を知らない弁護士の幻想で、期間の短い裁判が訴訟の動機になることは少ない。簡易裁判や少額訴訟が労働審判へ流れてくる程度である。

通常訴訟・・・・・・
差別事件、大型解雇事件、判例もないような事件に最適。
通常、労働者側から訴訟が提起される。自由法曹団などの東大京大在学中の司法試験合格組の粒ぞろいが、労働者側の代理人についているので、実のところ経営側は苦しい闘いを強いられる。いわゆる「事件内容に関係なく、弁護士能力で勝負がつく」といったところだ。このような事件には、経営側にも言い分が存在するのであるから、丁々発止、両者が真正面から取り組まざるを得ない。下手に妥協をして和解をしてしまうことで、労務管理問題にとどまらず、競合会社との受注販売競争のネタに使われることもあるので、弁護士任せにはできない事件である。
そして、訴訟となると個別企業から訴えを提起するのは難しいのだ。
したがって、トラブルの小さいうちにあっせん制度で解決することが肝要となる。そのために紛争調整委員会が設置されている理由もあるのだ。東京を除けば労働委員会でもあっせん申請が可能であるから、紛争調整委員会と労働委員会のそれぞれの特徴を生かすこともできるわけだ。とりわけ、あっせんは、「正直者が馬鹿を見ない」というふうな人事労務管理を貫く方向からすれば、個別企業にとっては非常に有効に活用できる制度だ。コンプライアンスを個々の労働者に対して進める企業にとっては、あっせん制度も活用できる。ただし、解決テクニックに高度さを求められるので、有能なあっせん代理人に依頼しなければならない。平成19年4月からは、あっせん代理人を個別企業に雇用常駐させることも可能となる。筆者の考えではあるが、日本の社会や経済の将来を見たとき、白黒決着で争っている場合ではなく、合意調整決着に努めることだ。それは個別企業のうちにこそ、その社会性と経済性が存在すると考えるのだ。

ところで、労働組合と会社とのトラブル
解決で、この3月1日から法制度が一部変更となる。労働争議の有無にかかわらず社会保険労務士が、団体交渉や労働組合対策に参入できるようになったのだ。
団体交渉に出席する弁護士は、まずいない。その理由は専門分野ではないから自信がないのだ。労働法の専門弁護士であっても、その多くは民事裁判実務に習熟しているほどに現場から離れているので、団体交渉の論点がダイジェスト版になってしまう。このダイジェスト版が交渉のみならず裁判になったときの敗訴要因となっているのだ。
また、労使いずれの側にも示談屋や事件屋が存在し、個別企業を食い物にする労務屋も数は少なくなったとはいえ、労使双方からしても彼らは邪魔者であることに変わりがない。そこで、社会保険労務士の場合、業務に関する倫理的罰則が定められているために、あからさまにトラブルを助長する労務屋のような仕事はできない。したがって、示談屋・労務屋・事件屋の排除に、相当役立つものと考えられる。実際に紛争に絡んで食い物にされた個別企業は非常に多い。これの被害防止に道を開くものだ。
なお、概して労働組合役員は労働諸法令について知識が少ないために、交渉の際にごり押しをしてくるケースがあるが、ここへ顧問社会保険労務士を引っ張り出してくれば、その程度の不毛な紛議防止程度には役立つことにはなる。
立法者は補助的にこの点に気づいている様ではあるが、いずれにしろ、現場に根ざしている社会保険労務士の役割を充実させることで、紛争激化の防止には大きな効果をもたらす。ただし、社会保険労務士といっても、労使紛争の仕事が一人前にできる者に依頼しなければならないことはもちろんである。一人前か否かを即座に見分けることは、明解な対策が出るか:それとも「ふぅーむ。大事ですな。」といって声を潜めるかで判断できる。
筆者(社会保険労務士の資格保有)個人には、全国主要都市の団体交渉などに対応できる社会保険労務士情報が集中しているので、お問い合わせはメールでどうぞ。


個別的労働トラブル主要 労働判例
今まで、労働判例の解釈は専門的な法律用語がちりばめられていたために、なかなか分かりづらいものがありました。個別労働紛争が続出しそうな雰囲気の中で、裁判などではどのように判断されるのかを前もって知っておくことは、とても重要です。そこで、法律学的には若干問題かも知れませんが、平易な言葉と短い文章で解説を試みました。次のURL:ダウンロードのページの左下のボタンを押して、中に入れます。
 http://www.soumubu.jp/download/


「経済は金融と株ではない」は経済学の基礎。
経済学の役目は、あらゆるすべての人が豊かな生活を送るためにはどうすれば良いか、を考えることなのである。「一方で儲かる人もいれば一方では損をする人が居る」とのストーリーは、経済学を否定するものなのである。封建時代を脱出する時点から、経済学はこのようにして、社会共同体の豊かさや発展のために、役割を果たしてきたのである。
ライブドア事件は、ただの嘘つき・詐欺といったところが事件の本質で、融資その他のために粉飾決算を行わざるを得ない事情とは無縁のものである。法律はマニュアル書ではないのにマニュアル書あつかいしたところに、この男の社会に対する無知が現れてしまったのだが。ある法科大学院の教授が「この人は証券取引法よく調べ知っているようだが、ウソをついてはいけないことは知らないようだ」と言っていた。
とりわけ、経済の根幹である豊かさを破壊していた非社会性に、もっとマスコミをはじめとして注目する必要がある。それは、ライブドアが詐欺まがいで乗っ取った個別企業の社員の、賃金大幅切り下げとかの労働条件の一気に切り下げや大量解雇などによって、せっかくの優良企業の足腰を弱めてしまった事柄に対してである。個別企業や労働者の豊かさを次々と破壊していったところに弁護の余地がなく、「胡散臭さ」はここから滲み出ているのだ。もちろん、労働基準法や労働組合法違反を繰り返している。証券取引法は調べるが労働法は調べた様子はない。最近の裁判では経済犯や経済秩序破壊に対して公序良俗が適用されるようになってきたが、豊かさの破壊に対してはライブドア事件が契機となるのであろうか。
グローバル経済だから、このような事件に巻き込まれたのではない。
このような男の存在を生み出してしまった日本の社会共同体の弱さを反省することが大切。他の豊かさを奪って自己だけが肥え太ることを許してしまい経済発展の足を引っ張ることになったのは、封建時代や全体主義にはびこっていた世間体であるから、これを社会共同体に組み換えたのだ。この男のやったことは世間体に基づくもので経済後退や豊かさの破壊であったとの分析・認識が必要である。個別企業中にも、この男のような者が「元気に!」飛び回っているから厳重注意である。