2009/02/10

第82号

<コンテンツ>
政府の雇用対策に弾みがつかない。
民間個別企業の経営者や管理職の気持ちが、
個別企業がチャンスとしてつかまえる事業分野、
もっと身近な適切なチャンスの例
この10年ほど、新商品を支える創意工夫が後退の一途
非常用労働者の増加が足を引っ張った原因ではない!
日系外国人問題が、日本経済の起爆になるかも。

労働契約法の解説 労働者と使用者の定義(第2条関係)
「労働者」とは、
「使用者」とは、


¶政府の雇用対策に弾みがつかない。
なぜ今一つの雇用対策になってしまうのか。それは、民間個別企業を育成するための雇用対策になっていないからだ。世の中には、雇用対策といえば、生活底辺層の下支えにしか発想が及ばない人もいて、経済的豊かさに目を向ける雇用対策などが考えられない人もいるのだ。その最たるものが選挙目当ての雇用対策である。
雇用保険の改正も4月1日分から行われる見通しで、失業手当の受給資格を得るには1年間の暦日が必要と、(つい先日改正されたばかりなのに)元通りの6ヵ月間の暦日となるようだ。給付日数も若干増加する見通し。
雇用調整助成金も、労働者を解雇しないで教育訓練するならば、大幅に支給しようとのことになっているが、成長企業を対象にした雇用調整助成金、失業者を吸収したい企業の雇用調整助成金は、未だ立案されたことがないのである。OECDの先進諸外国の多くは、勤め先が変更しても生活に支障がないから、成長企業がタイムリーに教育訓練で受け入れできる仕組みを作っている。工場の技能工が3年以上掛かってSEを習得する場合でも、ほぼ現役時代と同じ生活費が失業保険から支給されるのだ。


¶民間個別企業の経営者や管理職の気持ちが、
こぞって明るくなるような雇用対策が必要なのだ。確かに、筆者には、自動車産業は60%減、電機産業は50%減と、海外輸出向け産業は一斉に縮小しなければならない現実であるように思われる。ところが、内需消費関連、流通販売、生活密着産業は人手不足の兆しがはっきりしてきており、成長するマグマが溜まっているのである。なぜスムーズに成長が盛り上がらないかといえば、事業資金財源が成長マグマを抱える産業に回っていないからである。事業資金財源が投入されれば、いくつかの成長産業は爆発的に拡大する。成長するマグマが溜まっている成長産業が失業者を採用すれば、雇用調整助成金(今は解雇する事業所が中心)を支給する方法があるのだ。
現下の財政政策と経済状況では、適切に資金財源注入がされるはずもない。一般の銀行は、金融庁が恐いから、思い切って、事業資金を民間企業に投入するわけにもいかないのである。
昨年末に、アメリカ経済が立ち直れば経済回復と言った人も、今では沈黙。
自動車が景気回復したときにと、未だ、取引量が増えると錯覚している人たちもいるが、ここまで来れば、「迷信にとらわれ、救いようがない」とだれでもがサジを投げた。


¶個別企業がチャンスとしてつかまえる事業分野、
そこに有能な人材を確保し新体制を組み替えることと、その後の新たな労働力確保の方法を設定するのである。
これなら、中小・中堅企業でもできる。すなわち、
売れる商品と売れない商品がはっきりして来た今、
売れる客先と売れない客先がはっきりして来た今、
伸びる産業と落ちる産業がはっきりして来た今、
そこに
1.商品を売り込む新体制と有能人材配置、
2.その商品の定型的効率生産を実施する体制を新たに設定することなのである。
一般の人たちにとっては、きわめて頭の切り替えが難しいところであるが、総務人事部門の人たちの頭の切り替えは速い。誰でも本当は、営業現場最先端を歩き、よく観察していれば、はっきりと随所にチャンスは見えている。
このチャンスポイントこそは、日本の文化水準の高さから来るものであり、
精神的心理的余裕が芽生えるところに今回の経済大恐慌の特徴と明るさがあるのだ。
80年前の昭和大恐慌とは、このチャンスポイントの部分こそが異なり、某実務学者が450年ぶり(中世荘園制度基盤崩壊以来)の金融システム変化だ!と言っているところなのである。
学問と真の経済学は大切である。


¶もっと身近な適切なチャンスの例
をあげてみる。新商品(創造や開発方法は過去のメルマガ参照)は、発明ではなくとも十分に、その地域の文化社会に適合するように組み替えればよいのである。
事業として成り立たせるためには、
A.それを継続的に行なえる人的体制が重要なのである。
B.最初に、この人的体制=特殊チームを一挙に作り上げることが重要なのである。
C.自社で「特殊チーム」ができなければ、本当の意味でのアウトソーシングでもって、
D.素早く、個別企業の体制固めを行うのが良い。
E.時間をかけている分だけ損失は膨らむ。
F.生産性・収益性・労働意欲・労働効率性、この4分野だけを検討するのが定石
G.「新体制と有能人材」、加えて次に「新定型的効率生産体制」が収益・利益を上げる。
   (ここに、資金財源投入すれば、こぞって明るくなるような雇用対策となる。金融に限らず雇用保険財源も投入可能。だが、繰り返すが、政府に頼ることは無いのだ)


¶この10年ほど、新商品を支える創意工夫が後退の一途
は、人材派遣や偽装請負の流行で、人海戦術に頼るばかりであったから、創意工夫が後退となって来たのである。どこの個別企業でも、大なり小なり工程管理が「お粗末」になってしまい、35歳ぐらいまでの若年労働者層には、生産性・収益性・労働効率性の工程管理といった発想や訓練が、まったく出来ていないと言える。良くて、残りの一つの分野:労働意欲が、個人的にチラホラ残っている程度、今回の経済大恐慌が押し寄せて来る中、意欲をなくす若者も数多くいる。
要するに、会社組織を、今述べたように適切な新体制に組み換えればよいのである。
とにかく、人材派遣や偽装請負による、発展途上国並みの人海戦術、あるいは、そういった惰性発想が個別企業を停滞させているのである。あなたの会社が思わしくないのは経済危機が原因ばかりではない。


¶非常用労働者の増加が足を引っ張った原因ではない!
人材派遣や偽装請負の方式を取り入れたために、非常用労働者の能力発揮を押しつぶし、能力を活用しようにもできなくなり、個別企業の個々において、豊かさと経済発展を後退させたのだ。悪質派遣会社の誘惑と賄賂によって、社員が腐ってしまった工場が多い。
ところで、
昭和55年オイルショックころより前は、会社は「ピラミッド型組織と組織に貼りついた社員」であったから能力発揮が禁止をされていた。自ら進んで能力発揮を行えば、組織から排除されたのであった。排除された人は、中小企業の社長となった。が、全員成功したわけではない。
昭和61年労働者派遣法と男女均等法、これが労働力流動化と女性能力発揮を相まらせることによって、経済を押し上げた。これがバブル崩壊前後当時の労働生産性アップであった。ところで、その道のりというと、立法(昭和54年)の着想がされたとき、当時の日経連が大反対し、労働省は本省の存立をかけて6年間ほど地下活動を行う。昭和54年の派遣法の着想が、人材派遣会社でもなければ、当時の労働省でもなく、意外なことに日本の最底辺労働者を組織していた十数万人(全国47都道府県に展開する単一組織)の民間労働組合であったこと、昭和54年までの着想時点から元より非常用労働者のみが派遣労働者と想定、主な舞台は自民党労働部会での激論であったことは、まず知られていない。
(歴史の真実は、高校世界史で習う経済歴史を、脳裏に振り返えらせる)。
もう、半年や1年もすれば、
いくつかの個別企業の成長マグマの噴火!が目立つことは間違いない。
だが、世間の多くの人たちは、自分以外の会社が倒産してしまう方が心の慰めとなる。
だから、あなたは世間に流されないことが肝心だ。


¶日系外国人問題が、日本経済の起爆になるかも。
これは、経済の質的豊かさには寄与するが、量的発展にはあまり関係ないかもしれない。だが、経済の質的豊かさは、最終利益の高さと可処分所得の増加を意味する。筆者の35年ほどの、日本の労働力需給と開発の経験と研究に根拠をおいた、あまりにも唐突な話ではある。
ここ数日の取材中、今週末も取材予定、どうもここに社会的チャンスがありそうだ。



¶労働契約法の解説 労働者と使用者の定義(第2条関係)
(定義)
「第二条 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
2 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。」
第2条は労働者と使用者の定義を定めている。それぞれの法律で、用語の定義を行うのは、人によって考えが違ったり、諸説氾濫して法律の適用が混乱するからである。定義に定める用語については、広辞苑などの国語辞書に書いてある内容で解釈をしないことになっている。


¶「労働者」とは、
1.「使用者」と相対する労働契約の締結当事者、
契約は一方の申し込みの意思と、他方の承諾の意思の合致したときに締結されたことになる。書面がないからといって労働契約締結が無効になることはない。
2.「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」とは、
指揮命令その他によって使用されている事実と、
名称のいかんに関わらず賃金が支払われていること
それぞれの要件を備えていることが必須条件である。したがって、いつの時点で労働契約が締結されたがが証明されなければならず、使用者に使用されて労働していたことを証明(その裏付けはタイムカードなど)、加えて、賃金が支払われていた証明(その裏付けは賃金台帳や明細書)が必要となるのである。賃金は、賃金、給料、手当、賞与その他名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。賃金は、労働基準法第11条の「賃金」と同義語である。「対償」は辞書に載っていない用語、定義はないが、憲法25条の健康で文化的生活を営む権利であるところの生活保護の金額を上回っていなければならないとする立法趣旨であって、決して労働の対価としての意味に限定されている解釈ではない。
ところで、労働基準法での労働者の定義は、「事業又は事務所に使用される者」に限られる。
労働契約法では、実際に事業所で労働していたかどうかを問わない。賃金を支払われる者は労働契約法と同じである。そうすると、労働契約法では、使用従属関係が認められるか否かにより判断されるものであり、事業所に出勤していない人たちも、賃金に相当するものを受け取っていれば、労働契約法の労働者に該当するのだ。
すなわち、労働基準法では労働者ではなくとも、労働契約法では労働者となるのだ。(労働組合法では失業者も労働者として扱う)。民法第632条の「請負」、同法第643条の「委任」又は非典型契約で労務を提供する者だとしても、外形の契約形式にとらわれずに、使用従属関係の実態が認められれば、労働契約法では労働者と定めているのである。一匹狼、インディペンデント、外注、業務委託など、タイムカードなどの時間管理がされていなくとも、使用従属関係の実態が認められれば労働者である。ひとり親方は労働者となるが、子方も親方が数人使用していたとしても、単に報酬を分け合っているのであれば、親方・子方ともに、全員が労働契約法でいう労働者(元請会社との使用従属関係の実態)となる。


¶「使用者」とは、
「労働者」と相対する労働契約の締結当事者、「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」をいう。個人企業の場合はその企業主個人、会社その他の法人組織であれば法人そのものである。
その要件は、労働者に対する内容の反対側証明(その裏付けは同様のもの)となる。
労働基準法で定める使用者とは、「事業主のために行為をする人」、すなわち使用者のために行為をする人である。だから、部長、課長などの職務権限が明確にされている人たち、その他名称立場にかかわりなく事業主のために行為をする人は、労働基準法で定める使用者である。
労働契約法でこの人たちは、賃金を支払う者の代理で指揮命令その他を行っている範囲内に限って、労働契約法で定める使用者となる。使用者の特定に注意を要する。
また、個別企業の外部の人物、例えば弁護士や社会保険労務士も、事業主のために行為をする代理や事務代理を行えば、使用者としての責任を問われることになっているのである。
労働契約法で定める、労働者の定義は労働基準法よりも幅広く、使用者の定義は労働基準法より幅が狭い。労働契約法で定める労働者もしくは使用者に該当しなければ、この法律の適用はない。労働基準法での適用があったとしても、労働契約法では適用がない場合がある。
なお、労働契約法に関する解釈を厚生労働省労働基準局長が、基発第0123004号通達を平成20年1月23日に発してはいるが、その内容はあくまでも厚生労働省の考え方、厚生労働省の職員に考え方を徹底するための目的である。民間個別企業に、その考えを厚生労働省が強要するものでは決してない。したがって、裁判所がそのような判断を行うかは、また別であるから、くれぐれも注意を要する。