2015/10/23

号外:【最新情報】 マイナンバー取扱実務

<コンテンツ>
年末調整に係る、「扶養控除等申告書」 は記載不要
雇用保険手続に係る個人番号の空白記載(来年1月1日から)
就業規則の 「個人番号届出条文」 の記載リスク
社会保険労務士法の解釈と、マイナンバー制度
   「取扱を停止する事務代理」とは (社会保険労務士=法解釈必読記事)
巷のマイナンバー情報の混乱


§年末調整に係る、「扶養控除等申告書」 は記載不要
会社の安全管理措置の体制が定まり機能していない場合は、
年内に回収する、平成28年度の、「扶養控除等申告書」には、
個人番号の記載欄に斜線等を引いて、記入出来ないようにする必要があります。
安全管理措置のないまま個人番号を回収するのはマイナンバー法に違反します。
なお、
「扶養控除等申告書」は、税務署などに提出することはありませんから、
「個人番号を利用する書類」には該当しません。
別の方法でマイナンバーを取得する場合は、
この最も情報漏洩リスクの高い「扶養控除等申告書」には
平成29年度以降も個人番号の記載欄に記入出来ないよう措置出来ます。
国税と地方税に関する個人番号は
平成29年1月末までの源泉徴収票等の国と地方自治体に提出する書類が最初になります。
くれぐれも注意が必要なのは、
個人番号の届出は本人同意(法律の扱いは本人希望)が原則とされています。
(税務署等の問い合わせは、上記の如く綿密に正確に重ねて質問すると、初めて適法な返答がされます。どうぞ読者ご自身でも確かめてみてください)。


§雇用保険手続に係る個人番号の空白記載(来年1月1日から)
厚生労働省本省:雇用保険適用課の最新見解は次の通り(10月21日)
(1)事業主が取得できた場合にのみ個人番号を記載する。
(2)届出拒否や未取得その他は、空白で受理する、理由を問わない。
(3)窓口職員は個人番号欄が空白となる理由は尋ねない。
なお従来からの説明で、
個人番号が記載されている場合は、安全管理措置から職安への届出は直接持参若しくは書留郵便しか受け付けないとしています。
マイナンバー法では、___
第6条で事業主の協力努力(努力義務に至らない)が定められているだけで、
個人番号の扱いについては、いっさい権利義務が定められていません。
個別企業が労働者に対して、個人番号届出依頼をするだけに限り、過半数代表との労使協定の締結が必要になります。これが締結されていない場合は、届出依頼をするだけで刑法の強要未遂罪に該当することになります。実際に個人番号を労働者に届出させれば刑法の強要罪(権利も義務もないのに他人に強要)が成立します。それは同時に個別企業の不法行為を形成します。
内閣府は従前から、労使協定締結の努力までは要しないと回答しています。個人番号届出先の掲示をするだけで、個別企業は努力を果たしたことになるとしています。


§就業規則の 「個人番号届出条文」 の記載リスク
届出条文(改訂は労働条件契約変更)を就業規則の必要条項に盛り込む場合は、労働条件の不利益変更に該当します。その場合は単に過半数労働者の意見聴取をするだけでは不足であり、労働契約法や労働判例で納得説明義務が必要であることが明確になっています。正当な不利益変更に係る手続きが成されていない場合は、労働者の届出契約の効力がありません。
市販のマイナンバー関連書籍や社会保険労務士(就業規則の国家資格者)の言いなりに就業規則などの改訂を行ったとしても、その責任の責めや損害賠償義務は個別企業にあります。不利益変更の納得説明義務は極めてハードルが高く、労働条件の代替措置を図ることも必要なのです。まして、
イ)税金、雇用保険、社会保険いずれの行政機関も個人番号欄が空白であっても受理することを明確にしていますから、あえて個人番号届出義務の必要性を客観的合理的に個別企業が論述できるとは殆ど考えられません。
ロ)マイナンバー法は、後で述べる社会保険労務士法とマイナンバー法の関連で内閣府が、法律は個人番号取得の協力努力だけですとの見解を示しました(10月20日)。
ハ)その中で、要配慮個人情報であるハイレベル個人番号を個別企業が回収しなければならない理由が整備できることは考えにくく、漏洩した場合の個別企業の損害賠償責任が増し加わるばかりです。
ニ)この場合、得意先や自社がマイナンバー関連事業を行っているとか、この業界が恩恵を受けるからといった理由も、労働者に届出契約を強いるとか届出正当化をする理由にはなりません。


§社会保険労務士法の解釈と、マイナンバー制度
  取扱を停止する事務代理」とは (社会保険労務士=法解釈必読記事)

「a.社会保険労務士は、労働および社会保険に関する制度の質の向上に責任を持つ、法で定められた独占業務を行い得る国家資格者である。 b.マイナンバー法に関係する業務においても、開業社会保険労務士は社会保険労務士法第20条(依頼に応ずる義務)によって、法定の立場と職責から依頼人との契約の自由を制限されている。 c.これは、マイナンバー法による法規制のない依頼人の個人番号取扱にあっても、社会保険労務士は依頼人の秘密を守るにとどまらず、その立場と職責を法にも優先させることで、個人番号の取扱を停止する事務代理を行い得ることとなり、よって、労働および社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するものである」。
※個人番号の取扱を停止する、主なケースとして考えられるもの。
1.労働に関する事業主の統治義務から、個人番号の安全管理が個人情報保護法で適切に措置されていない場合。
2.事業主と過半数労働者代表との間に、会社が個人番号の届出を労働者に依頼できる労使協定が締結されていない場合。
3.個人番号に関する就業規則の改訂が不利益変更の疑いがある若しくは正当な手続き(代表選出方法など)によって改訂(監督署への届出完成)していない場合。
4.労働者の個人番号に係る事業主の安全管理措置が、事業主自らが定めた取扱規定など水準を満たしていない場合。(安全管理措置不備での個人番号受け取りは個別企業の法違反を形成する)。
5.労働者の扶養家族等の個人番号回収にあたり、会社の代理人としての手続(委任契約締結や委任状作成)、その事務(申し込みと承諾の意思が一致したとの契約行為の完成)が、個別企業と労働者との間での完成が成されていない場合。
____以上の内容について筆者は____
内閣府大臣官房職員とで筆者は意見交換をし、(むらおか=大阪会員)
開業社会保険労務士が「個人番号の取扱を停止する事務代理を行い得ること」を含めて、マイナンバー法に抵触・矛盾するものではないことを内閣府に確認済みです(10月20日)。すなわち当座の間、個別企業内に保管されている個人番号を記載・利用することなく、雇用保険や社会保険の手続、給与計算業務を従前どおり進めることが可能になります。
この件に関し内閣府は、全国社会保険労務士会への問い合わせを行ったこと、並びに内閣府は厚生労働省に照会をかけたとのことです。
この内容文章は全国社会保険労務士会にFAX送付しています(10月21日)。
このような合法的解釈により、
経営者、管理職、労働者の基本的人権や社会権を擁護し、独占業務として強化されることなど、開業している社会保険労務士の業務が大幅に見直されることになります。
A.法制度に基づかない無秩序な不作為又は作為によって生じるところの、法違反若しくは法令の円滑な実施に悪影響を与える事態の未然の防止に資することとなります。
B.無秩序な不作為若しくは作為の責任を社会保険労務士に負わせようとする又は事業主に免罪符を与えるかのような行為とは根本的に異なっています。
C.もちろん解釈にあっては、マイナンバー制度が労働者の個人番号届出の同意が前提に成り立っており、この番号法の趣旨が諸制度の補助機能であって、この番号制度を本命だと錯覚する認識ではありません。
D.加えてこの解釈により、事業者の外注委託先が国家資格者外や非独占業務でも可能かのような誤解と事態が間違いであることを、民間企業や行政機関に深く広く認識していただくための理論根拠となり、且つダンピング防止や社会保険労務士の社会的地位向上に役立つ派生効果を生むことになります。
E.なお、依頼に応ずる義務にかかわる様々なケースの中で、個人番号の取扱を停止する主なケース5項目といった公序に反する疑念が晴れない場合に、依頼事業主の依頼申し込みに対して、「料金が3倍である」とか、「委託に伴う監督内容をことさら厳格化する契約を迫る」といった方法で、依頼に応ずる義務を回避しようとすることは、単なるいいがかりをつけて依頼を拒むだけの行為であるから、社会保険労務士法第20条に違反する行為に該当することが明確に論理づけられました。
F.社会保険労務士法第20条の依頼に応ずる義務の定められた背景や趣旨は、同法第一条と相まって深遠なる意味を持っているとの認識が深まることとなり、労働や社会保険分野でのマイナンバー取扱を独占業務としている社会保険労務士の倫理観向上には一段と資することとなります。(依頼に応ずる義務は税理士、弁護士の制度にはない)。


§巷のマイナンバー情報の混乱
「説明文に主語がない!」これがマイナンバーに関する行政機関のNetやチラシの特徴である。これにより、“義務とか必要”といったものが、会社に負担させられているようだと読み取れる情報が氾濫している。国税を代弁している税理士、便乗商法に情熱を傾ける記者、政府の鼻を「へし折る事」を真の目的としている反対勢力など、彼らの情報と法令等実務解釈には疑念と違和感を持たざるを得ない。
◆「無届け者は行政から狙われる?」、デマははなはだしい。地方自治体に集められるマイナンバー空白者の所得税情報。行政機関は作業効率が最優先、とにかく数の勝負である。したがって、個人番号記載分から同居家族の突き合わせをかけて行く。個人番号のない帳票の突き合わせは全て後回し。手間暇を掛ければ行政効率が下がるからである。
◆金融機関の文書は比較的淡々と述べられ、個別企業の権利義務については触れることを避けているものが多い。だが電話となると、「個人番号が必要です」と話を持ちかけ、質されると「手続きが遅れます」と言い直し、催告をすると「期限まで行います」と言う始末である。やはり金融機関のやり易いようにやっている。
◆少なからぬ弁護士がTVやNetに登場する。法律的文章解釈は一流である。だが、「扶養控除等申告書」に記載欄が存在して、個別企業ではこの年末内に使用するといった実務のことは何も知らない。平成28年1月1日から実施ですと未だに解説している。実に弁護士は常用労働者未経験者が多い。「マイナンバー制度は憲法違反だ」との訴訟を予定しているとする某弁護士も、どうも年末調整の「扶養控除等申告書」の個人番号のこと、雇用保険や社会保険の手続を知らなさそうである。
◆筆者は定期的に出版される書籍のチェックを行っている。国家資格者が著作や編集に関わっていても、マイナンバーでの便乗商法は少なくない。就業規則作成を意味なく誘引し、個別企業不利益や労働者不利益変更について極力ふれていないものもある。その多くの者は、この10月から一挙に畳み込んでビジネスを拡大しようとした。しかしながら、法的瑕疵や安全管理の夢物語などから民間企業のマイナンバー利用が次々と延期されている。便乗商法を狙ったものも、次々目論みが外れ撤退している。
◆新設備やソフト導入をIT業界各社が狙っている、が実際の導入は遅々として進んでいない。今年の春は「絶対に必要!」とIT業者は営業をかけていたが、IT業者の営業マンも「番号が集まらなければ要らない」と話している、一時のやる気が現在ではなくなっている。まして法的注意点である、届出は本人同意が前提とか、会社には権利義務がないとか、個人番号記載書面とか、漏洩の損害賠償とかを無視して説明がなされている。都合の好い所が強調されるから、「しっくり」しない。
◆クラウド?とかの新語新サービス=代わりに個人番号を集めます!というわけだが、依頼する個別企業側の費用がかさむばかりであることが認識されてきた。社会保険労務士のように独占的に業務範囲を拡大できる要素もなく、場合によっては社会保険労務士法違反を企んでいたケースも発覚して、クラウドの受けはよいとは言えない。
◆未だ大半の中小企業は、「何もしない! ほっておく!」の状況である。無理(整えずに集めると法律違反)して安全管理措置を整える必要がないことも経営者に浸透してきた。安全管理措置も個人番号回収も、何もしなくても法律違反にならないからである。無理に回収する手間暇や危険負担を社会保険労務士その他外注業者に分散させることすら不可能であることが理解されつつある。独占的に業務を引き受けられる社会保険労務士たちも、そこまでダンピングして依頼を受託しようと思っていない。
◆国税、地方税、雇用保険、社会保険、労災保険その他いずれもが、マイナンバーの記載がなくとも手続きができるとの正確情報が広まりつつある。個別企業の経営者は、行政機関と矢面には立ちたくないと恐怖を抱いている。その心理を解消する手法が、正当な業務を行う社会保険労務士の行う、「個人番号の取扱を停止する事務代理」である。事業主の誤解や恐怖が解消されるのである。

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